社内資格「サウンドマスター」認定制度の裏側…ソニーストアで働くスタイリストの仕事は売るだけじゃない?感動体験の創出を担いソニーファンを増やす

ソニーの商品は多くの量販店などで買うことができますが、ソニーストアという直営店が存在することを知っていましたか?直営店で接客を務めるのは、全国各地に150人近くいるスタイリストと呼ばれるスタッフ。実は、そのスタイリストの中には「サウンドマスター」という、ソニーのオーディオ商品のスペシャリストが存在するのだとか。今回は、ソニーストアの運営や人材育成戦略の業務に携わる安倍美香さんに話を聞いて、「サウンドマスター」の深意に迫りました。
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ソニーストアは「商品を熟知したスタッフ」が接客する最も濃い商品体験の場
—まず、量販店でも商品の購入が可能な中で、ソニーが各地に直営店を設置している理由について教えて下さい。
私たちはソニーストアを「最も濃いソニーの商品体験ができる場」として位置づけています。発売前の商品をいち早く体験できる、購入前の悩みを解決できる、購入後も使い方を学ぶことができるといった、直営店ならではのサービスやイベントをご用意しています。
—その「濃い商品体験」の担い手としてスタイリストが接客しているのでしょうか。
そうですね。お客様に濃い商品体験をお届けするには、なによりもソニー商品を熟知したスタッフがいることが大切だと思っています。ですから、そのような知識を持ち合わせるスタイリストが、直営店ならではの強みを提供する大切な役割を担っています。

—「ソニー商品を熟知したスタッフ」と「体験」というワードが印象的ですね。
この二つの要素を大切にすることで、一番達成したい私たちのミッションは、「ソニーのファンを創り出す」ことです。そのため、ソニーストアでは販売店として接客するだけではなく、商品体験会や各種イベントを定期的に開催しています。例えばカメラでは、一歩踏み込んだ商品の使いこなしや、印象的な写真の撮り方をお伝えするセミナーやトークイベントなどのプログラムがあります。
—ソニーファンとは、単にソニー商品が好きな方々だけを指しているわけではないということでしょうか。
体験会やイベントの意義付けとしては、お客様同士のコミュニティを作っていきたいという想いがあります。ですからソニーストアには、「ソニー商品に愛着を持つファン」だけでなく、「コミュニティとしてソニーに関わるようなファン」も増やすための拠点としての働きがあるといえます。
詳しいだけではない…オーディオ商品の魅力を伝えるスペシャリスト「サウンドマスター」
—ソニーファンを増やしていくための重要な役割を担うのが、スタイリストなのですね。ですが、ファンを創っていくのはすごく難しい仕事のように思いました。
ソニーファンを創るには、まずはスタイリストが徹底的に商品を使いこなし、自信を持ってお客様に商品を提案する力を持っていることが必須です。そのために、ソニーストアには独自のスタイリスト育成プログラムがあり、「座学で学ぶ研修」から「実践研修」を通して、必要な知識やスキルをしっかりと学んでもらっています。
—スタイリストの中には、「サウンドマスター」という社内資格を持っている人もいると聞きました。これも研修で学ぶのでしょうか。
スタイリストの専門性を高める研修プログラムはいくつかありますが、「サウンドマスター」の育成プログラムはまさにその先駆けと言えると思います。この育成プログラムを立ち上げたきっかけには、近年、高付加価値商品の傾向が市場で急速に高まってきたという背景がありました。
—数十万円するウォークマン®などがありますよね。すごく高い価値を持っていそうです。
まさにそのような商品に代表されるように、付加価値をしっかり伝えたい商品が増えてきています。単に音楽を聴くのであれば、皆さんがお持ちのスマートフォンで気軽に聴くことも可能です。しかし、ソニーのウォークマンを使って頂くことで「これまで聴いていた楽曲をどのような素晴らしい音色で楽しめるのか」「なぜそのような音づくりが可能になったのか」を、お客様に説得力を持って実感して頂くには、ウォークマンの高いスペックを説明するだけでは不十分だという現実がありました。そこで生まれたのが、ソニーの音づくりの思想やオーディオ商品の魅力をしっかり伝えることができる人材を育成する、「サウンドマスター」の育成プログラムでした。

—高い専門性を備えた接客スタッフを育成する背景には、高付加価値商品をお客さまに納得して使っていただきたいという想いがあったのですね。ですが、具体的すぎる専門知識はお客さまに理解されないこともありそうですが、いかがでしょうか。
そこは、私たちも重要視してきたポイントでした。「サウンドマスター」の育成プログラムでは、具体的な商品情報はもちろんですが、その背景にあるソニーのものづくりの思想、商品開発にまつわるストーリーをしっかりお伝えすることで、「ソニーのオーディオ商品の魅力を『初心者』から『マニア』にまで、分かりやすく伝えることができる人材育成」を目指しています。
—その目標に合わせてプログラムの内容も工夫されていたということでしょうか。
はい。「サウンドマスター」の育成プログラムでは、大きく3つのことを学びます。1つ目は「オーディオ商品に関する幅広い知識」、2つ目は「商品を分かりやすく魅力的に提案する力」、3つ目は「ソニーの音づくりの思想や商品に込めたこだわりを情熱を持って伝える力」です。研修講師による座学、実技研修に加えて、商品設計や販売戦略を担うさまざまな部署にご協力を頂きながらプログラムを実施しています。ソニーの音づくりの思想をしっかりと理解することで、魅力的な音をどのように楽しむことができるかを、情熱を持って自分の言葉で伝えられるようになることを目指しています。
—それは意外でした。単に、商品の知識を覚えるだけではなく、ものづくりの背景を知ったり、表現力を高めたりする部分までを含めてが、「サウンドマスター」の研修なのですね。
特に面白い例をお話しすると、この研修でお世話になっているソニーOBの講師の方は、「音の世界を魅力的に表現できるようになるために、おいしいものを沢山食べなさい」とおっしゃるのです。豊かな味や繊細な味をどう感じ取るか、それをどのような言葉で表現するかという感性は、音の魅力を説明する「サウンドマスター」に欠かせない大切な感覚なのでしょうね。
—味覚の表現力を付けることは、音の違いの表現力を広げることにもつながるということなのですね。
研修の中には、「ソニー商品の魅力が際立つ音質表現を考える」「予め指定された楽曲を聴いて、自分の言葉で魅力的にその楽曲の聴きどころを紹介する」という課題があります。日々感性と表現力を磨いていく訓練をすることで、これまで気づいていなかった音楽の楽しみ方や商品の魅力を発見して、スタイリスト自身が自然とソニー商品のファンになっていく様子が見られます。まず、スタイリスト自身が本当にソニー商品に感動すること、そしてその感動をお客さまに伝えずにいられなくなる経験を積むことが、さらなる成長を遂げていく段階なのだと思っています。
接客方法が多様化する現場でも、変わらないキーワード
—「感動」は、スタイリストの接客にも欠かせないキーワードのようですね。
「世界を感動で満たす」という言葉がソニーのPurposeの中でも使われているように、ソニーストアに関わってくださったお客さまに何かしらの感動を心に残せるような存在が、スタイリストであって欲しいと思っています。
—「お客さまの心に感動を残す」というのは、商品の音が良い・悪いというだけではなく、「お客さまとのコミュニケーションの中で感動を作っていく」という認識があるのでしょうか。
まさにその通りです。商品の良さを説明できる知識やスキルだけではなく、感動を提供したいという熱量がとても大事だと思います。ですから、まずはスタイリスト自身がソニー商品のファンであること、そして自身の心が動いたポイントをしっかりお客さまにお伝えする熱意があることが大切だと、入社時のスタイリストに伝えています。

—やはり、ソニーストアの運営やスタイリスト育成方針の背景にも、「感動を提供したい」という想いが根底にあるのですね。
はい。そして、その感動体験を作り出す方法も、今はかなり多様化してきています。
—多様化とは、具体的にどのようなことでしょうか。
これまでは、店舗に来店されたお客さまを接客するのが主流でしたが、今は来店だけでなく、電話での接客、ビデオ会議システムを利用したオンライン接客なども充実しているため、ご自宅から気軽にご相談頂くことが可能です。また昨年からは、オンライン上の仮想店舗にスタイリストが商品レビューを掲載する「バーチャル店舗」の取り組みも始めました。
—感動体験を作り出すための環境が多様化してきたということですね。
かつては、各店舗にその地域のお客さましか訪れることができなかった限定的な交流から、今は場所の垣根なく、全国のスタイリストとお客さまが交流できる空間が作られています。お客さまのニーズにあった提案力をさらに高めることはもちろんですが、スタイリストにはぜひ自身の個性や強みを生かして、「あなたに接客して欲しい」とお客さまに言っていただける得意分野を持って、さらに活躍の場を広げて欲しいと思っています。
—今、お客様との交流の方法が多様化する中で、より説得力を増した商品提案が重視されるようになってきているということですね。
そうですね。一方で、接客スタイルが変化しても、「世界を感動で満たしたい」という根底にある想いは変わりません。ですから、多様な手段をとりながら商品の魅力を伝えた先に、お客さまが「この商品を使ったらこんな風に生活が豊かになりそうだ」と、商品を使いこなすご自身の姿をワクワクしながら想像して頂くところに、ゴールがあると思っています。
<編集部のDiscover>
「サウンドマスター」という資格があるということを初めて知った時には、「音に詳しい人」がもらえる資格なのだと想像していました。しかし安倍さんのお話を聞いて、音に詳しいというだけでなく、「サウンドという要素を通じて感動体験を作るマスター」なのだという認識に変わりました。そして、スタイリストは売るだけが仕事なのではなく、お客さまと一緒に商品を楽しんだり、商品を通じて感動を分かち合ったりするのが仕事。この意味合いが、販売員ではない「スタイリスト」という名前に反映されているのかもしれませんね。














